護身グッズは持ってるだけで犯罪!?軽犯罪法ってなに?法律を知って安心安全に護身グッズを携帯しよう

防犯対策

自分の身は自分で守る!そのためには護身グッズが必要だ!と思って持ち歩いていたら、お巡りさんに職務質問を受けて持ち物検査をされて、「軽犯罪法」という単語を聞いて動揺している間に没収されてしまった・・・なんてことにならないように、正しく護身グッズを使用する知識を学んでいきましょう。

そもそも護身グッズってなに?

護身グッズについてわかりやすくまとめてみました。ぜひご一読ください。

護身グッズって持っていても違法じゃないの?

社会通念上で正当な理由が明確にあり、かつ適法な護身用具であれば問題はありません
また自宅や店舗などに備え置くことは完全に合法です

本題の答えとなりますが、護身グッズを携帯する際に明確な理由を持っている場合は違法ではありません。また自宅や店舗などに護身グッズを備え置いておくこと自体は、全く問題ありません。

しかし護身グッズの中には「催涙スプレー」「スタンガン」「特殊警棒」など、相手に対して攻撃性の強いと判断されるものもあります。本来は自己防衛のために所持携帯することが目的とされる護身グッズですが、使い方によっては過剰防衛と見なされたり、はたまた犯罪に使用されるケースもあります。
そのため、そういった護身グッズを使用したり携帯するには「社会通念上で正当な理由」が求められます。

次項以降では、「催涙スプレー」「スタンガン」「特殊警棒」など、相手に対して攻撃性の強いと判断されるものを護身グッズと称して解説していきます。

護身グッズの所持携帯に対して関連性の高い法律は「軽犯罪法」

軽犯罪法(けいはんざいほう、昭和23年5月1日法律第39号)は、さまざまな軽微な秩序違反行為に対して拘留科料の刑を定める日本法律である。

引用元:Wikipedia [軽犯罪法]

軽犯罪法とは、立ち入り禁止の場所に入ったり(軽犯罪法第1条第8号)、虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出る行為(軽犯罪法第1条第16号)など、軽微な秩序違反行為に対する法律です。
意外なものとして、バスやタクシー待ちの行列に割込む行為(軽犯罪法第1条第13号)なども罰則対象となります。

ちなみに一般的に市販されている護身グッズ(護身用具)は刃物や銃ではないので、銃刀法には抵触しません。逆に刃物や銃は、護身グッズとしては扱われないということですね。ですので「このナイフは身を守るための護身グッズなんです!」なんて言い訳しても通用しません。

護身グッズに関する過去の判例や法律の解釈

護身グッズの所持携帯が該当しそうな軽犯罪法上の項目は、凶器携帯の罪(軽犯罪法第1条第2号)と、侵入具携帯の罪(軽犯罪法第1条第3号)です。
弁護士法人 泉総合法律事務所さんがわかりやすく解説してくださっていますので、引用させていただきます。

(2) 催涙スプレー1本を正当な理由なく隠匿携帯する行為

法1条2号の凶器携帯の罪が成立します。
凶器携帯の罪では、「正当な理由がなくて、刃物、鉄棒その他他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」が、処罰の対象になります。

本号にいう「正当な理由」があるというのは、本号所定の器具を隠匿携帯することが、職務上又は日常生活上の必要性から、社会通念上、相当と認められる場合をいいます(最判平21.3.26)。

例えば、職務上又は業務上の必要のため携帯する場合はもとより、登山等のため、必要な登山ナイフを携帯する場合などは、正当な理由がある場合です。そして、上記最判は、「会社の経理担当者で、有価証券や多額の現金を電車や徒歩で運ぶ場合があった被告人が、職務上の必要から催涙スプレーを入手し、健康上の理由から行う深夜路上でのサイクリングに際し、専ら防御用としてズボン内に入れてこれを隠匿携帯したのは、法1条2号にいう『正当な理由』によるものであったといえる。」としています。

「携帯」とは、所持の一態様ですが、それよりも狭く、日常生活を営む自宅ないし居室以外の場所において身近に置いていることをいいます。

引用元:弁護士法人 泉総合法律事務所

(3) ペンライトを正当な理由なく隠匿携帯する行為

法1条3号の侵入具携帯の罪が成立します。
侵入具携帯の罪では、「正当な理由がなくて、合い鍵、のみ、ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯した者」が、処罰の対象になります。

本号の例示以外の器具には、ドライバー、ペンチ、やすり、縄ばしご、懐中電灯、ハンマー、スパナ、ペンライトなどがあります。

引用元:弁護士法人 泉総合法律事務所

護身グッズを携帯するための「正当な理由」とは?

護身グッズの所持携帯について一番のキーワードは「正当な理由」です。
では、その正当な理由というのは、いったいどういう理由なのでしょうか。

護身グッズではありませんが、例えばドライバーや金槌などをバッグに入れて持ち歩くと、軽犯罪法1条2号の凶器携帯の罪に問われる可能性があります。それでは整備士さんや大工さんなど、仕事道具を現場まで持ち歩くことができませんよね。しかし整備士さんや大工さんにとっては「仕事道具だから携帯している」という正当な理由があるので、違法にはなりません。(休日など仕事以外の時間帯で不用意に持ち歩いていると罰則対象になる可能性はあります)

護身グッズを携帯する際の「正当な理由」の例
  • 職務上又は日常生活上の必要性がある場合
    • 通勤や通学中などに暴漢等との遭遇するかもしれない場所を通過する必要がある
    • ストーカーなど不審者につきまとわれている(女性の場合)
    • 高額な現金や有価証券などの金品等を輸送する必要がある

性別によって捉われ方の異なる軽犯罪法

前記で引用紹介した判例では、催涙スプレーを所持していた男性に対して「無罪」との判決が出ました。しかし法の解釈は担当官(警察官)によって異なる場合もあります。

例えばストーカーにつきまとわれているため護身グッズを携帯していたのが「男性」だった場合、多くの法律事務所や護身グッズ販売店では「正当な理由としては認められないだろう」と判断しています。

おそらく一般的に「男性は女性よりも体力面で強い」という観念や「暴漢などの性別比率」などが影響しているのでしょうが、男性は女性よりも護身グッズを持ち歩くことに対して厳しい判断をされるようです。

法律違反かを判断するのは警察ではなく裁判官

意外かもしれませんが、警察官は法律に違反しているかどうかを決めることはできません。
犯人を逮捕する際に「逮捕状(逮捕令状)」を持ってきますよね。その逮捕状とは、裁判所が「この人は◯◯という罪を犯してる可能性があるから逮捕して良いよ」という内容を示したものでで、それに基づいて逮捕するわけです。もちろん警察は「目の前で犯罪が行われた、もしくは行われた直後」は現行犯逮捕する権限を与えられています。しかし裁判所で判決されるまでは、罪は確定していません。それまでは「犯罪行為を行なった疑いがある人」なので「容疑者・被疑者」と呼ばれるのです。

以前「密着警察24時」のような警察密着型ドキュメンタリーを観ていた時、犯人と思われる人を確保してからもなかなか逮捕できず「いまから裁判所に令状をもらいに行ってきます!」とパトカーが走り出すシーンがありました。痴漢や暴行などは現行犯で逮捕できない場合は、きちんと逮捕状を発行する必要があるんですね。

余談が過ぎましたが、つまり護身グッズを携帯していた際に警察官から「軽犯罪法違反だ」と言われても、それはその警察官の判断であって法の裁きではないということです。正しくは「軽犯罪法に抵触する疑いがある」であり、そこで正当な理由を述べて警察官が納得すれば問題はありません。もし警察官が納得してくれない場合は、不服申し立てを行い裁判スタートです。
前記の催涙スプレーの判例は、まさにこのケースですね。

間違ってもカッとなって催涙スプレーやスタンガンを警察官に向けて使用しては絶対にいけません。
「身の危険を感じたので正当防衛です」なんて言い訳は絶対に通用しませんよね。むしろ身の危険を感じたのは警察官の方でしょう。

護身グッズと「青少年保護育成条例」

まず条例と、その条例の一つである「青少年保護育成条例」を見てみましょう。

条例は、 日本の現行法制において地方公共団体が国の法律とは別に定める自主法。

引用元:Wikipedia(条例)

青少年保護育成条例(せいしょうねんほごいくせいじょうれい)は、日本の地方公共団体の条例の一つで、青少年保護育成とその環境整備を目的に地方自治体で公布した条例の統一名称である。青少年保護条例や、青少年健全育成条例と言うこともある。

引用元:Wikipedia(青少年保護育成条例)

つまり、条例は都道府県ごとに異なり、その中でも未成年(青少年)が健全で安全な日々を送れるようにするために定められた条例です。ちなみに青少年保護育成条例は、全国48都道府県すべてにおいて定められています。

それで、何で護身グッズが青少年保護育成条例と関係があるの?と思いがちですが、護身グッズを安全かつ安心して使用するためには、この条例も知っておかねばなりません。

未成年の催涙スプレーやスタンガン等の所持は禁止されている

青少年保護育成条例に基づき、スタンガンや特殊警棒などの未成年への販売と、未成年の所持が禁止されています。これは、それらの護身グッズが「有害玩具」として扱われているからです。

詳しくはWikipediaの「有害玩具」の項目をご覧ください。

大切な我が子を想った行為が条例違反となることも

大切な子供の通学路で不審者の目撃情報なんか出た日には、もう気が気じゃないですよね。
防犯ブザーを持たせてはいるけれど、それだけでは心配だと感じる親御さんも多いと思います。

「息子よ、男は悪に屈してはならない。だからスタンガンと特殊警棒を授けよう。」
「娘よ、いざとなったら催涙スプレーを使いなさい。」

などと、大切な我が子のために護身グッズを買い与えたりすると、青少年保護育成条例違反となりますのでご注意ください。

本記事のまとめ

本記事での護身グッズとは「催涙スプレー」「スタンガン」「特殊警棒」など、相手に対して攻撃性の強いと判断されるものを主に指しています。

安心安全に護身グッズを所持するためのまとめ
  • 安心安全に護身グッズを所持するためのまとめ
  • 護身グッズを自宅や店舗などに据え置くことは全く問題ない
  • 相手に対して攻撃性の強いと判断される護身グッズの携帯は、軽犯罪法に抵触する場合がある
  • 護身グッズを携帯して持ち歩く際は「社会通念上で正当な理由」を持つことが重要
  • 女性よりも男性の方が護身グッズを携帯することに対しては厳しい判断をされる
  • 未成年が護身グッズ(有害玩具)を携帯していた場合、青少年保護育成条例に違反となる

いかがでしたでようか。
ちょっと法律関係のことも出てきて難しい内容になってしまいましたが、自分の身を守るための護身グッズで自分を苦しめてしまわないように知識をつけておきましょう。

護身グッズは使用方法を守れば、必ずあなたの安全に役立つ心強い道具です。
これからも犯罪に巻き込まれないように、万がいち巻き込まれてしまっても被害を最小限で抑えられるように心がけていきましょう。

本項で述べている法律や条例また事例などは、あくまでも本記事執筆者の知見や調査、主観に基づくものです。間違った解釈や理解をしないためにも、弁護士などの専門家へ相談して正しい解釈や理解に努めてください。

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